防水工事の種類と特徴 -メリット・デメリット-
防水工事=水回りの工事をイメージされる方が多いのですが、、防水工事は戸建やマンション・ビルなどすべての建物にとって、建物の内部が漏水被害を受けないよう、建物を雨や雪から守り耐久性を保つうえでとても重要な工事です。
ビルやマンションの大規模修繕工事のなかでも、屋上防水工事は重要度の高い工事となります。

種類別に特徴や工程、耐久年数、メリット・デメリットについてご紹介します。
防水工事の種類別 特徴・メリット・デメリット
ウレタン防水

ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する工法です。
つなぎ目のないシームレスな仕上がりが特徴で、複雑な形状の施工が容易なため、改修工事にも適しています。施工時の天候に影響を受けやすく、職人の技術によって仕上がりに差が出る点がデメリットです。
耐久年数は、一般的に 10〜15年 程度で、環境条件や施工の精度によって耐久年数は大きく変わります。
また5〜6年ごとにトップコートを再塗装することで、10年以上の防水性を保持可能と言われています。
ウレタン防水は2種類の工法があります。
・密着工法
・絶縁工法
関連記事>>マンションの屋上防水工事とは?種類や特徴など基礎知識を解説!
工程
下地調整
プライマー塗布
補強布貼付け
防水材塗布
トップコート塗り
ウレタン防水のメリット
- 下地の形状に馴染みやすい、シームレスな塗膜で美観に優れる
- 短期間で施工できる
- 比較的安価である
- 屋上やベランダなどあらゆるところで施工できる
- 臭いや熱の発生がない
- 既存の防水層の上から塗装できる
- 高性能ウレタンなら重ね塗りして弾性を高められる
ウレタン防水のデメリット
- 人の手で塗るため均一な塗装が難しい
- 施工者の技術によって仕上がりに差が出る
- 施工時の天候に影響を受けやすい
- 経年劣化、亀裂に弱い
(重ね塗りで解決できる場合もある)
ゴムシート防水

ゴムシート防水は、ゴム系または塩ビ系のシートを貼り付けて防水層を形成する工法で、マンションやビルの屋上に広く採用されています。
伸縮性があり、建物の動きに追従しやすい一方で、シートの継ぎ目処理が必要で、劣化すると全面交換が必要になり、旧防水シートの撤去作業が加わるのでその分工事費がかかることもあります。
施工期間が短く、大面積の施工に適しており、広い屋上の防水工事ではコスト効率が良い点がメリットです。
ゴムシート防水の耐久年数は、一般的に 10~15年 程度で、劣化が進む前に補修するのが望ましいと言われています。
ウレタン防水は2種類の工法があります。
・接着工法(密着工法)
熱にも強く、耐候性が高く、柔軟性があり地震の揺れに強い
・機械固定工法
強風地域や大規模な屋上向き
工程
下地調整
プライマー塗布
補強補修
防水シート貼り
トップコート塗り
ゴムシート防水のメリット
- 伸縮性があり、建物の動きに追従しやすい
- 温度による物性変化が少ない
- 耐用年数が長い
- 短工期・低コストで施工できる
- 目立ちにくいところの防水工事や応急処置に最適
- 木造建築にも適している
- 保護層として塗装材を厚塗りすれば軽歩行も可能
ゴムシート防水のデメリット
- 複雑な形状には採用にしにくい
- 紫外線に弱くシート自体が薄いため、鳥害や衝撃に弱い
- シート自体が劣化すると全面交換が必要になる
- 化学物質を使用するのでシックハウスに注意
塩ビシート防水

塩ビシート防水は、塩化ビニル樹脂製の防水シートを接着剤や機械で固定する工法で、ウレタン防水と比較して広範囲を一度に施工できるため、ムラが少なく仕上がります。
耐候性に優れ、長期間防水性能を維持できますが、下地の平滑性が求められる点がデメリットです。
塩ビシート防水の耐久年数は、一般的に 10〜20年 程度で、他の防水工法と比べて長期間使用することができます。定期的な点検とメンテナンスをおこなうことで長期間の防水性能を発揮すると言われています。
塩ビシート防水は2種類の工法があります。
・接着工法(密着工法)
・機械固定工法
工程
下地調整
下地処理
接着剤下塗り
塩ビシート貼り
シール処理エア抜き
完了
塩ビシート防水のメリット
- 紫外線や熱に優れた耐久性がある
- 耐候性に優れ長期間防水性能を維持できる
- 高い伸縮率と耐摩耗性があり保護層なしで軽歩行が可能
- 鳥害を受けにくい
- 施工しやすく下地の撤去が必要ないので改修工事に最適
- 短工期・低コストで施工できる
塩ビシート防水のデメリット
- 下地が平らでなければ施工しにくい
- 接着剤でつかない場合がある (熱風で溶かして接着する必要がある)
- シートを急に曲げると切れやすく
- 可塑剤が気化すると割れやすくなる (耐用年数は10~20年)
- 他のシート防水と同様、つなぎ目の処理が必要
FRP防水

FRP防水は、FRP※1(繊維強化プラスチック)を用いた防水工法で、ガラス繊維を含んだ樹脂を塗布して防水層を形成します。
軽量かつ高強度で、耐候性・耐食性に優れ、歩行可能な強度を持つため、ベランダやバルコニーに最適です。
継ぎ目の無いシームレスな仕上がりで高い防水性を発揮しますが、紫外線に弱いため長期間にわたり紫外線に当たると劣化しひび割れを起こす場合があります。ひび割れからトップコートが剥がれてしまうと、防水層の劣化も早くなるので、メンテナンスが必要です。また他に比べて施工コストが高いのがデメリットです。
※1:FRPとは
繊維強化プラスチック(Fiberglass Reinforced Plastics)の略称
ガラス繊維などの補強材で強化したプラスチック樹脂のこと
FRP防水の耐久性は、約10年~25年で、約10年周期で表面のトップコートを塗り直したり、ひび割れている箇所を補修が推奨されています。
工程
下地調整
プライマー塗布
プ1プライ
中塗り
上塗り
完了
FRP防水のメリット
- 軽量で下地への負担が少ない
- 高強度で耐久性・耐候性に優れる
- 継ぎ目のないシームレスな仕上がり
- 歩行が可能なほど強度が高く、バルコニーやベランダに適している
FRP防水のデメリット
- 紫外線に弱く劣化してヒビ割れが生じることがある
- 伸縮しにくく地震などの際にヒビが生じることがある
- 硬化の際に臭気対策をする必要がある
- コストが高い
アスファルト防水

アスファルト防水は、アスファルトを浸透させたシートを積層して防水層を形成する工法で、古くから使われている信頼性の高い方法です。
耐久性が高いので、屋上やルーフバルコニーに適していますが、重量があり下地への負担が大きい点がデメリットです。
アスファルト防水の耐久性は、約10年~15年とされています。
耐用年数を過ぎると、防水層がひび割れたり劣化したりするため、雨漏りや汚れの付着などリスクが高まります。
アスファルト防水は3種類の工法があり、用途に応じた選択が可能です。
・熱工法(加熱して施工する伝統的な方法)
・常温工法(加熱不要の施工方法)
・トーチ工法(バーナーを使用してシートを密着させる方法)
◆熱工法

220度~270度に溶融した改質アスファルトを接着剤として、改質アスファルトルーフィングを貼りあわせて防水層を作る工法です。
長所は溶融した改質アスファルトを全面に張り付ける為隙間が出来ず、防水層としての信頼性が高いことがあげられます。施工後すぐに硬化して防水性能を発揮します。
◆常温工法

粘着層付改質アスファルトルーフィング(1~2枚)を下地に張り付け、ローラー転圧をして下地に張り付けて積層し防水層を形成、あるいはルーフィング類(1枚)をゴムアスファルト系などの液状材料で下地に張り付けて防水層を形成します。
長所は作業の安全性が高く、施工の準備や段取りは容易であることがあげられます。
◆トーチ工法

両面を改質アスファルトでコーティングした防水材をトーチバーナーであぶり、防水材を一部溶解させて施工する工法です。トーチ工法は、アスファルト防水熱工法で使用するアスファルト溶解釜等の大がかりな設備を必要とせず、さらに施工時の臭気、煙がほとんど出ないので近隣に対して不快感を与えません。
熱工法と比べて大幅なCO2削減が出来るので環境負荷が低いことも特徴です。施工者のメリットとしては、高温の溶融アスファルトを使用しないので火傷の危険性が低く、施工しやすい工法と言えます。
工程
下地調整
プライマー塗布
下地調整材塗布
絶縁・増張り
保護塗料の塗布
メルトーチの施工
完了
アスファルト防水のメリット
- 防水性能が高い
- コストもそれほどかからない
- 防水層が厚く水密性が高い
- 保護モルタルで押さえれば耐久性が高まる
- 他の工法よりも耐用年数が長い
- メンテナンスが少なくて済む
アスファルト防水のデメリット
- 高熱で溶かす必要があり、工事中に臭いが生じることがある
- 工事の手間がかかる
- 工事中は上に保護モルタルを貼る必要がある
- 木造建築には向かない
- 紫外線に弱い
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